沖縄県の基地所在市町村における、基地内土地(軍用地)への固定資産税課税は、違法な土地評価法に基づく課税であることが明らかになりました。土地は、地方税法に基づき固定資産評価基準に沿って評価されるべきものですが、一部の市町村では、評価基準を逸脱した評価事務取扱要領が策定され、平成30年、令和3年のたった2回の評価替えにより、土地の評価額が1.4~1.5倍となりました。このような評価法を許しておけば、今後、基地内土地への固定資産税は上昇を続けるでしょう。
「沖縄の土地を守る会」では、このような違法かつ過大な課税を是正するために活動していきます。77年前の沖縄戦の帰結として住民の土地が強制接収され、現在も土地の異常使用が続いている沖縄の基地の中の土地。国による異常使用に対する補償としての軍用地料は、復帰から50年かかって徐々に正当な補償額に近づきつつありますが、それでもまったく十分な額ではありません。このような状況であるにも関わらず、このように強制的に国にとられた土地に対して、自治体が恣意的に課税し過大な固定資産税を徴収し、土地の強制接収への補償としての賃借料を搾取しようとしています。このような違法な課税は許してはいけません。
本サイトでは、基地内土地の過大な固定資産評価の是正に向けた本会の活動を随時公表していきます。多くの方に、基地内土地への過大な固定資産税課税の問題を知っていただきたいと思います
「沖縄の土地を守る会」代表世話人 土地村 守
新着情報
沖縄県知事に対して公開質問状を提出します
経緯
沖縄県は市町村との間で基地内土地(軍用地)の固定資産評価について10年以上にわたり、評価法がどうあるべきか定期的に会議を行っているにも関わらず、地方税法や固定資産評価基準に照らして軍用地にどのような評価法が適切であるか統一的な見解を何ら得ていません。まさに行政の不作為と言えるでしょう。
この10年の間に、たとえば北谷町では、沖縄県が会議の場で提案したとされる評価法に沿って評価を行うことしたために、結果的に地方税法と固定資産評価基準を大きく逸脱した評価を行うようになっています。北谷町は、基地内土地が「雑種地」であるのに、その地目に反して「宅地」として評価するという違法な評価を行っています。宅地評価法の一つ「その他の宅地評価法」を無理やりに適用しており、なおかつ宅地化に必要な造成費等が何ら差し引かないという違法な評価をおこなっており、過大な固定資産税評価額となっています。不動産鑑定評価においては、まったく価格形成要因の異なる基地外民間宅地の売買価額の事例を採用してこれを基準に軍用地の鑑定評価額を決定するという支離滅裂な鑑定が行われています。また、町は、隣接する宜野湾市内の基地内土地の高額な評価額に一致させるべく、何ら妥当性の検討もないまま、「必要な調整を行った」として根拠のない固定資産税評価額の引き上げを行っています。これにより、北谷町では平成30年と令和3年のたった2回の評価替えで固定資産税評価額がなんと1.4~1.5倍に引き上げられました。これに伴い、今後の固定資産税額は急上昇することになります。
このような基地所在市町村の恣意的な評価法について、市町村との会議を主宰している沖縄県企画部市町村課では「評価は市町村が行うもの」と述べるにとどまり、3年ごとに各市町村長に対して発出している企画部長名通知についても「公権力の行使に該当しない」として、何ら責任はないとの立場です。2022年(令和4年)7月に土地所有者から提出された行政不服審査請求についても、同年10月、沖縄県知事は「本件通知は(略)審査請求の対象とは認められない」との理由で審査会にはかることすらなく、却下しました。
沖縄県は、明らかに地方自治法の規定を超えて同通知によって市町村に影響力を行使し、かつ、北谷町の例に見るように、個人の納税義務に対して影響を与えている(法令でもない通知によって私人の権利義務に違法な外部効果を及ぼしている)と指摘されたにも関わらず、行政法の専門家等に意見を求めることはおろか、請求を却下することによって審査会すら開かないという裁決を下したのです。
請求人はこの裁決に行政訴訟を検討しているとのことですが、本会では、本件についての沖縄県の見解をただすべく、公開質問状を用意することとしました。本サイトでは、事前に広くその内容を知らせ、県民の皆様のご意見を聞きながら、質問状を完成させていくこととしています。関心のある方はどうぞご意見やご質問を寄せてください。
なお、上記に触れたように、北谷町の事例では不当評価が行われているので、すでに土地所有者により町に対して不服申出がなされ、北谷町固定資産評価審査委員会によって審査が行われているところです。また、上に触れましたが、同町の基地内土地に対する不動産鑑定評価書には矛盾点や不備、恣意的かつ支離滅裂とみられる記載が多く、独立、客観的であるべき鑑定評価が自治体の意向によって歪められ、多数の納税者の不利益につながっていると認められたため、不動産鑑定評価に関する法律に基づき、沖縄総合事務局に対し、不動産鑑定士に対する措置(行政処分)の要求が行われる見込みです。その他、事態の進行状況を見ながら、必要な行政訴訟が提起される可能性があります。
公開質問状の詳細
沖縄県は、2010年(平成22年)8月に「沖縄県土地評価調整会議設置要綱」を施行し、「固定資産税の土地評価の均衡化及び適正化に資するため、情報交換等必要な調整を行うものとする」として、県と市町村職員らの間で、3年ごとの固定資産税評価額の評価替えに向けて定期的に上記の会議を行うようになりました。参加者は、沖縄県企画部市町村課職員、市町村固定資産税担当職員、不動産鑑定士です。
この「土地評価調整会議」の分科会として、「基地内土地評価特別分科会」が設置され、基地内土地評価の課題等について話し合われています。その上で、評価替え年度の前々年度末ごとに、県企画部長名で「評価替えに係る米軍(自衛隊)基地の用に供する土地の評価について」と題した市町村長あて通知を発出してきました。その内容は直近の「令和3年度評価替えに係る米軍(自衛隊)基地の用に供する土地の評価について」(令和2年3月26日づけ、企市1951号)に到るまで、ほぼ同じ内容となっています。以下のような内容です。
評価替えについては、3年に1回の評価替えごとに総務省から各都道府県に向け発出される通知「評価替えに関する留意事項について」に留意すること。
とくに米軍(自衛隊)基地の用に供する土地の評価については、固定資産評価基準はもとより、1981年(昭和56年)に旧自治省が沖縄県に対して送付した文書「米軍(自衛隊)基地の用に供する土地の評価について」(昭和56年12月1日づけ、自治固116号)と、同年に旧自治省文書を市町村長あてに伝達した同名の通知(昭和56年12月9日づけ、総地第1112号)にも留意すること。
また、旧自治省文書(県からの照会に対する回答のため、「旧自治省回答」と呼びます)の2(2)に示された、標準地比準方式に準じた評価方法を採用する際の標準地の評価にあたっては、「当該土地の利用状況を考慮しながら施設周辺の土地(宅地、田、畑、山林、原野、池沼、牧場等)との均衡を勘案し、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格を活用することが適当であると思料されます」と記されています。
県によるこの通知は令和2年3月発出にいたるまで、平成23年3月、平成26年3月、平成29年3月と、固定資産評価替えの前年ごとにほぼ同じ内容で発出されてきました。しかし、上記の通知のうち「周辺の土地との均衡」との文言は、特に北谷町の事例で見るように、市町村の基地内土地の評価に対して、固定資産評価基準を逸脱させる方向に影響力を及ぼしていると考えられます。「周辺の土地との均衡」との文言が、固定資産評価における評価の均衡の概念を正しく伝えておらず、曖昧、不明瞭な文言であること。また、同通知の発出の元となっている「沖縄県土地評価調整会議」で提示されたと見られる県の考え方においては、総務省(旧自治省)の見解を誤解している可能性があること。さらにこれらがあいまって、同通知が基地所在市町村の基地内土地評価法に対して、評価を誤らせる方向に影響を及ぼしていると考えられます。
以上の疑義があるため、沖縄県知事に対して下記のように質問します。